従業員の発明と特許【2003年5月号】

従業員の発明と特許―最新の最高裁判例(平成15年4月22日)を読む【2003年5月号】

弁護士 榎 本   修


  これまで「会社で研究者が取った特許は、会社のもの」と何となく思われてきましたが、実は難しい法律問題が色々あります。
 
 青色発光ダイオードを発明した中村修二氏という研究者の特許の事件をご存じでしょうか? 中村氏は日亜化学の在職中にこの発明をし、会社に巨額の利益をもたらしたことを理由として、特許権の移転と報酬1億円の支払いを求めて現在東京地裁で係争中です。

 特許法35条は、このような従業員の発明(職務発明)を、当然には会社に権利が移転するものとはせず、就業規則等で権利移転を定めなければならない、としています。また、権利移転にあたっては従業員に「相当の報酬」を支払わなければいけない、と定めています。
 今回の最高裁の平成15年4月22日の判決(オリンパス光学工業事件)では、従業員に出願補償として3000円、登録補償として8000円、工業所有権収入取得時報償として20万円を支払済みのケースで、本件発明により会社が得た利益5000万円のうち、5%が従業員の貢献によるものであるから、250万円が従業員の受けるべき「相当の報酬」と結論付けています。 

 このような問題に備えるためには、具体的な就業規則の規定や「特許発明に関する規定」を会社に整備する必要があります。