債権保全チェックポイント

景気が悪くなってきました~今からでもできる債権保全チェックポイント~ 【2008年11月号】

                                                弁護士  榎   本      修

 日経平均が28年ぶりに7000円割れを記録し、トヨタ自動車の営業利益も前期比7割減の見通しと報じられています。景気の悪化は一段と深刻さを増しています。当事務所でも、取引先の倒産や不払に伴う法的措置に関するご相談が増えてきたように思います。裁判所の民事再生・破産事件数も増加傾向に感じられます。

 取引先に倒産が増えてきたならば、当方はそれに備え、被害を最小限に食い止めなくてはなりません。今回は、「今からでもできる債権保全チェックポイント」と題して、少しでも被害を少なくする方法について考えてみましょう。

①債権額(御社のポジション)の再確認
 こういう時だからこそ、「危なそうだな」と思う相手方に、当方は幾ら債権を持っているのか再確認してみましょう。回収サイトや売上げの増減も再チェックして「もし最悪のことが起こったらどうなるか」を想定します。場合によってはある程度取引を縮小・限定してゆくことが必要かもしれません。相手が倒産してから「こんなに引っ掛かってしまったのか」と気付いても手遅れということが少なくありません。

②契約書はありますか?
 こういう時のためこその契約書です。「あそこは危ないかも」と思う相手だけでも、その取引先との契約書があるかどうか再確認してみましょう。
 代表者個人や役員の個人保証を取り付けようと思っても、倒産間際に取り付けたのでは後から「詐害(さがい)行為」(他の債権者に対する抜け駆け)だとして取り消されたり、破産管財人の弁護士から否認されることもあります。早く取り付けることに越したことはありません。

③商品の所在を確認していますか?
 いざ、相手方に不渡りが出たというときに、自分の納めた商品がどこにあるか分からず、結局回収が失敗に終わったというケースも少なくありません。商品の所在や転売先が分かれば、動産売買の「先取特権(さきどりとっけん)」という権利で回収できるという場合があります(当事務所では、実際にこの権利を使って数千万円の回収ができたケースもあります)。相手が倒産する直前には、商品が、いつもと違ったイレギュラーな流れをしている場合もあります。こういう時だからこそ、御社が売却された商品の商流を現地(倉庫など)も確認するなどしてチェックすることが大切になってきます。

 ④承諾なく商品を引揚げることは問題
 こういう時には、沢山の債権者が相手方のところへ押しかけます。「自分の売った商品だから」と言って、相手の承諾なく引き揚げてくると、後で「こちらの社長は了解していない」「窃盗罪で被害届を出して刑事事件にする」などとクレームをつけられるケースもあります。本来払わなければならない債務を支払わない相手に限って他に言うことがないので後からこういうクレームを出してくる傾向にありますし、その債務者がクレームを出さなくても他の債権者から言われる場合もあります。こんなことで警察沙汰になるのは馬鹿馬鹿しいですし、それで弱みを握られて回収できるものも回収できないという結論のケースもあります。
 商品を引き揚げなければならない。そういう時にこそ、当事務所に適時に御相談いただき法的に問題のない形で引き揚げをすることが大切です。当事務所としてはできる限りタイムリーにご相談にお答えしたいと考えています