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期限の利益喪失条項 【2011年5月号】

                                               弁護士  今   井   千   尋


 今回は、契約書を作成する際の重要なポイントである(特に債権者にとっては契約書を作成する理由の1つと言っても過言ではありません。)期限の利益喪失条項についてご説明したいと思います。

1 「期限の利益」とは

 例えば、物を売買する契約を締結する際に、売主・買主間で「○月○日までに売買代金を支払う。」という合意をしたとします。この合意は、買主(代金支払債務の債務者)にとっては、「○月○日までは売買代金を支払わなくても良い。」ということを意味します。このような債務の履行を猶予される債務者の利益のことを「期限の利益」といいます。 

 反面、債務者に期限の利益がある状態では、債権者は債務者に対し、債務の履行を強制することができませんから、期限以前に権利行使をしたい場合の債権者にとっては、債務者の期限の利益を失わせることが重要課題になります。

2 民法137条

 この「期限の利益」をどのような場合に失わせることができるかというと、民法137条に規定があり、次のような場合には債務者は期限の利益を主張できないとされています。

 ①債務者が破産手続開始の決定を受
けたとき
 ②債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
 ③債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき

 お気づきのように、例えば、債務者が手形の不渡りを出したときや、第三者から強制執行を受けたとき、破産の申立があったとき(かつ、破産開始決定が未だ出ていないとき)などは含まれていないのです。債権者の立場からすると、これらの場合にも債務者の期限の利益を失わせ、速やかに債権回収を図りたいと考えるのは自然です。

3 期限の利益喪失条項

 そこで、民法137条所定の場合以外にも、債務者の信用を損なわせる事由が発生した場合に、債務者の期限の利益を失わせる条項を契約書の中に盛り込むことが行われます。これが期限の利益喪失条項と呼ばれるものです。

 具体的には、

 ①債務者において破産・民事再生・会社整理・特別清算等の申立があったとき、
 ②債務者が手形や小切手について一回でも不渡りを出したとき、
 ③債務者が支払を停止したとき、
 ④強制執行・仮差押・仮処分・滞納処分があったとき、
 ⑤その他、信用を損なう事由が生じたとき、

などといった事由を列挙し、その場合には債務者が期限の利益を失う旨の条項を盛り込みます。

4 実情

 債権回収に関する法律相談をお受けしていると、代金の大きな契約や継続的な取引に関する契約であるにも関わらず、契約書のない場合(当然期限の利益喪失に関する特約は認められません)や、契約書があっても期限の利益喪失条項がない場合が散見されます。いざ取引先が破綻した場合には大変重要なものですので、是非、契約の更新時期など機会を捉えて期限の利益喪失条項を盛り込んだ契約書を作成されることをお勧めいたします。

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