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無戸籍問題ってなぁに 【2015年11月号】

                                                   弁護士  杉  浦  宇  子


 「無戸籍問題」ってご存じですか?

 この問題は以前から存在しましたが、近年にわかにクローズアップされ、最近では法務省も本腰を入れて取り組む姿勢を見せています。去る11月11日にも、愛知県弁護士会で電話相談窓口を設置して「無戸籍ホットライン」を実施しました。

 「無戸籍問題」とは、読んで字のごとく戸籍がない状態のまま国内で生活している人がいるという問題です。日本では、戸籍法により、子どもが生まれたら、出生日から原則14日以内に子どもの出生届を役所に提出しなければならないとされており、出生届を提出すると子どもの戸籍が作られます。「無戸籍」の人は、何らかの理由で出生届が提出されないか、或いは提出しても未受理のままの状態になっていることにより起こっています。

 では、なぜ、出生届が提出されないのか?大きな原因は、いわゆる300日問題にあると言われています。

 妻が婚姻中に夫以外の男性の子を懐胎した場合、仮にその後離婚しても、離婚後300日以内に子を出産した場合には、民法第772条(嫡出推定)の規定により、子は元の夫の嫡出子と推定されてしまうので、子の出生届を提出すると、子は元の夫の戸籍に入ってしまいます。

 そうすると、出産した元妻が、元夫に出産の事実を知られたくないがために、子が元夫の戸籍に載ることを避けようと出生届をしないということが生じ、これにより戸籍の無い子どもが生じて社会生活上の様々な不利益を被ることになってしまうのです。

 民法第772条の規定に当てはまる場合、嫡出性を否定するには、原則として元夫から嫡出否認の訴えを提起してもらわなければなりません。ただし、例外として、妻が子を懐胎した時期に、夫と別居して音信不通であった等夫婦間で性的関係を持つ機会がなかったことが明らかな事情がある場合には「嫡出推定が及ばない」とされ、元夫の嫡出否認の訴えがなくても、元妻側から「親子関係不存在確認請求」や「認知請求」の手続をすれば、戸籍上元夫の子とはしない取扱をすることが可能となります。

 しかし、例えば妻が夫婦間暴力(いわゆるDV)から逃れて、離婚後も元夫から身を隠しているような場合等、元夫との関わりを恐れてどうしても出生届を提出できず、かといって元夫に対して親子関係不存在確認請求をすることも高すぎるハードルとなるような場合には、結局子どもが戸籍のないままの状態が続くことになります。

 もっとも、現在では、戸籍が無くても、子どもの福祉を考慮して、住民票を作成できることが多いので、予防接種を受けたり学校に通ったりできることもあり、少なくとも子ども時代には社会生活上の不都合を感じることが以前よりは少なくなってきているようです。とはいえ、結婚するときやパスポートを取得するときには戸籍が必要となってくるので、そのようなときには戸籍の無い不都合が顕在化します。

 この問題は、立法的解決が望まれていますが、時間がかかります。民法第772条に該当する場合でも、既述のように例外的に推定が及ばない取扱ができる場合があります。

 解決のためには、思い切って弁護士に相談して正しい情報を得ることが大切です。

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