「働き方改革関連法案」の成立について(安田剛弁護士)

「働き方改革関連法案」の成立について 【2018年10月号】

                                 弁護士  安  田      剛

1.「働き方改革関連法案」の成立
 最近、ニュース等でよく見聞きするようになった「働き方改革」ですが、本年6月29日、国会でいわゆる「働き方改革関連法案」が成立しました。 本稿では、「働き方改革関連法案」の改正ポイントを解説します。

2.時間外労働の上限規制の導入
 現行法上、法定労働時間は、1週40時間、かつ1日8時間とされており、これを超えて労働者を働かせてはならないと定められています。この法定労働時間を超えて労働させる場合には、時間外労働及び休日労働に関する労使協定(いわゆる「三六協定」)の締結などの条件が必要です。  
 この「三六協定」の時間外労働の上限について、今までは法律で上限の定めがなく、平成10年の労働省(厚生労働省ではなく昔の労働省)の告示により上限の定めがあるだけでしたが、今回の「働き方改革関連法案」では、法律(労働基準法)で時間外労働の上限が明記されました。  
 詳しい内容は紙面の関係で省略しますが、現在の「三六協定」の内容を今回の改正に合わせて見直す必要があります。

3.月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の猶予廃止
 中小企業に対しては月60時間超の時間外労働の割増賃金率(50%以上)の支払について猶予措置がありましたが、廃止されることになりました(2023年4月1日施行です)。

4.年次有給休暇の確実な取得
 年次有給休暇のうち一定日数(5日)について、従業員に確実に取得させるようにしなければならないこととされました。

5.高度プロフェッショナル制度の創設
 一定の年収以上の労働者について、一定の要件のもとで、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする制度(高度プロフェッショナル制度)が導入されます。

6.正規・非正規の不合理な待遇差の解消
 同一企業内の正規雇用労働者と、パート・有期雇用等の非正規労働者との不合理な待遇差を禁止するため、個々の待遇(各種の賃金手当など)ごとに、均等・均衡を図ることが義務付けられました。具体的にどのような待遇差が不合理とされるか等については、厚生労働省からガイドライン案が示されており、この内容に照らして非正規雇用労働者の待遇を見直す必要があると考えられます。

7.まとめ
 以上、簡単に解説しましたが、今回の「働き方改革関連法案」は重要な改正ポイントが多数含まれており、注目すべきです。